メンズコスメは市民権を得るのか

元来、「化粧」や「メイクアップ」というワードは、女性らしさを連想させます。これは、日本のみならず世界中で通用する常識でしょう。しかし、昨今ソーシャルメディア上に数多のメイクアップ動画が公開されていることや、男性用メイクアップやスキンケア商品を提供するブランドが増えていることから、性別問わず誰でもカラーコスメを楽しめる時代が近づいてきています。

ファッション業界は一歩先を行っていますが、美容業界も同じように、ジェンダーに関する根強い固定観念を少しずつ取り払い、性別による差別化を減らす方向に進んでいます。性差が小さくなっている現代において、メイクアップは性別やセクシュアリティに囚われず、1人の個人が自己表現するためのツールの1つとなっています。特にInstagramやTikTokなどのSNSのを見れば、男性が化粧をしている動画や写真がたくさん掲載されています。

しかし、「男性のメイクアップ」は、単発的なトレンドなのか、それとも常識として根付くのでしょうか?

時代は変化を求めている

Premium Beauty Newsは、「男性の化粧は古代から行われてきた習慣である」と述べています。例えば、日本では公家や歌舞伎役者などの男性が化粧をする文化があり、江戸時代には男性が毎日のように髪結処(現代の理髪店)に行くほど、男性は高い美意識を持っていたと言えます。このように、化粧は古代から行われてきた習慣であり、何世紀にもわたって受け継がれてきたものなわけです。現代では、デヴィッド・ボウイ、ジョニー・デップ、プリンスなど、多くの有名人が男性メイクアップの先駆者になろうとし、常識として根付くよう努力をしてきましたが、やはり「化粧」は女性だけの領域と考えられてきた常識を変えるまでには至っていません。

それでは、なぜいま「男性のメイクアップ」が大きく広がっているのでしょうか?

それは、「社会的なラベリング、枠、固定観念に囚われないジェネレーションZと呼ばれる世代の意思が大きな影響を与えている」と同記事では指摘しています。

日本では、若い世代を中心にメンズコスメがブームになっているわけですが、メンズコスメはすぐにトレンドになったわけではありませんが、同じような現象が世界中で着実に進展しています。ドレスを着てヴォーグ誌に登場したり、グラミー賞でスーツにボアを合わせたりした元ワン・ダイレクションのハリー・スタイルズは、ファッションやビューティー業界にある先入観を覆すことに大きく貢献しています。また、ジャレッド・レトや多くのK-POPアーティストのように、アイシャドウやマスカラを使う男性は、世界的に見ても非常に影響力があります。このような人たちは、「世界の美に対する基準」を変革することにも貢献しています。

TikTokでは、「#boysinmakeup」のハッシュタグで2億3千万回以上、「#mensgrooming」で5億5千万回以上の再生回数を記録しています。トレンドというよりも、男性のメイクアップは、新型コロナウイルス感染症のパンデミックのような予期せぬ出来事に後押しされて、徐々にメインストリートになりつつあるわけです。

男性用メイクアップブランドも出現

新型コロナウイルス感染症が世界的に流行する中で、よりナチュラル志向で本格的なメイクアップを好む女性が増えた一方で、男性はZoomなどのオンライン会議でスケジュールが埋まってしまうことが常識となった今日では、男性がメイクアップするようになったことは自然な流れと言えます。そこで、元プロ野球選手のアレックス・ロドリゲス氏が男性用のメイクアップのブランドラインを立ち上げ、現在はシミやシワ用のコンシーラーを販売しています。同氏は、コレクション発表時にInstagramで、「オンラインでのミーティングを矢継ぎ早にこなす必要があるこのご時世では、シミやカミソリ負けを隠すために、素早く簡単に使えるツールが必要だと気づきました」とコメントしています。いわゆる “Zoom疲れ “が、男性のメイクアップの急激な流行の起因となっているともいえます。

そして、この流行は数字でも確認できます。昨年、ウェブデータ分析会社のMozは、2019年の同時期と比較して、ロックダウンされた2020年4月のインターネット検索で「男性のメイクアップルック」という検索ワードの利用が約80%増加したことを報告しています。また、くまやシミを隠すためのアドバイスの検索も増加しています。その一方で、「The Guardian」紙は先日、英国のある小売業者のデータを解析し、2020年の下半期で男性用スキンケア市場が300%成長したことを報じました。しかし、これらの数字は、男性用化粧品、そしてメイクアップが、未だに成長過程にあることを示しています。

Gucci Beauty、MMUK、そしてもちろん、CHANEL、TOM FORD、Marc Jacobsなどのこの分野の先駆者たちのように、高級品から手頃な価格のブランドまで、多くの美容ブランドが男性向けのメイクアップ製品を提供しています。また、特に男性向けの製品でなくても、Nars CosmeticsやM.A.C.のように、男女問わずすべての人を対象とした製品も多くあります。この夏、ロンドンでは、「War Paint For Men」とおいうブランドが、男性向けの化粧品を販売するための世界初の店舗をオープンしました。このような取り組みが急速に増えていることからも、男性用メイクアップが主流になっていくことは間違いなさそうです。

参照記事:
https://www.premiumbeautynews.com/en/trends-are-men-really-going-to,19024

Share on twitter
Share on facebook
Share on linkedin
Share on pocket

お問い合わせ

イギリス及び中東市場への進出にご興味がある方は、下記フォームからお問い合わせください。
弊社サービスとイギリス及び中東地域内に関する情報を提供させて頂きます。
担当者より3営業日以内にお返事差し上げます。